STORY

会社を救った
「POSシール」の
誕生秘話。

未開拓であった業務用シーリング材市場への参入

1980年代初頭。家庭用接着剤の市場ではライバル企業が勢いを増す中、セメダインは、業務用シーリング材の開発を推し進めていました。シーリング材とは、目地や隙間などに充填することで防水性や気密性を保持するために用いる充填材。建築や製造の現場ではなくてはならない資材です。

まず、開発の主材料として用いたのが株式会社カネカが開発した「変成シリコーンポリマー」でした。これは、シリコーンとウレタンの両方の性質を持つ二液タイプの弾性シーリング材用ポリマーで、当時としてはまったく新しい材料。これをセメダインによる独自の発想と技術で世界初の一液化に成功。容器を開封したらすぐに使えるようにしたのです。これは原料メーカーも驚くほどの発想の転換であり、日本だけでなく世界中から注目を集めることになったのです。

「POSシール」

現場の声を生かして改良を重ねる

大きな期待を背負って市場に参入した一液形変成シリコーン系シーリング材「S510」。ところが、硬化性、接着性、貯蔵安定性など様々な問題が浮上。苦情の連続で一時は製品の撤退や廃止も検討されましたが、一部の自動車メーカーで問題なく使用されていることから、かろうじて生き残ることができたのです。

その後、数々の改良が重ねられ、ついに1982年これまでの問題点をすべて改善した理想の弾性シーリング材「S512改」が完成しました。特筆すべきは画期的なカートリッジ容器を自社開発したこと。この特許を取得した新容器により数年間他社の参入を抑えることができたのです。

さて、製品が開発されたことで本社では「S512改」の本格的市場投入を計画。まずはネーミングとして「塗料がのるシリコーン」の意味を込めて「 POS(Paint On Silicone)シール」と命名されました。当時主流のシリコーン系は塗料がのらず、廉価なウレタン系は耐候性がよくない欠点があり、そこで発売にあたり、POSシールには「塗料がのる」「耐候性が抜群」「塩ビ鋼板に良くつく」といったキャッチコピーをつくり、大々的なセールスキャンペーンを展開。また、販売部門の努力によってセメダインとそれまで取引のなかった住宅メーカー市場に食い込むことができるなど、需要は一気に広がっていったのです。

当時のPOSシール展示会場の様子

POSシールの名前の由来

あらゆる部門の連携によって大ヒット商品は生まれる

「POSシール」は、その後も高層ビル用やサイディング材(建物の外壁材)用など、様々な用途に応じてラインナップが拡充され、今なお進化を続けています。POSシールが生まれ、育ち、成功することができた背景には、開発・企画・販売の各部門が先を見据えながらしっかりと連携したことが要因と言えます。しばらくヒット商品に恵まれなかった会社の沈滞ムードを一掃し、セメダインに再び力を与えたPOSシールの成功は、次の商品開発にも受け継がれています。