STORY

接着剤の概念を
根底から覆した
弾性接着剤のパイオニア。

セメダインの危機にワイガヤチームが発足

1970年代に入ると東京をはじめとする日本の建築物は高層化の一途を辿り、その壁面には大型陶板や薄型天然石などを用いた大型パネルが取り付けられるようになってきました。ところが、当初から従来のモルタル工法ではそれらの接着が困難であることが分かっており、その解決策の一つとして接着剤による乾式工法が見直されつつあったのです。

そのような時代を背景に、セメダインでは戦前より看板商品であった「セメダインC」をはじめとする「接着剤」の売上が下降線を辿っていきます。「このままでは創業の柱だった接着剤ブランド『セメダイン』の灯が消えてしまう」。そんな危機感から、社内に職制や肩書も無関係に話し合うワイガヤ(ワイワイガヤガヤ)チームが発足しました。世界初の一液形変成シリコーン系シーリング材として市場で高い評価を得ていた「POSシール」にヒントを得て、従来の発想とは異なる接着剤を作りたいという想いに賛同したメンバーは10人以上。新商品の開発が始動したのです。

剥がれない接着というこれまでにない発想

ワイガヤチームが考え出した新たなコンセプトは「強い接着から、剥がれない接着へ」というもの。高温多湿などめまぐるしく変化する厳しい環境下では、硬くて強い接着剤を使って接着しても、時間の経過や条件の変化によって剥がれたり亀裂が入るケースもありました。

そこで、「接着力は必要最低限あればよく、むしろ曲げや剥離に強く、熱、水、薬品に強いゴムのような弾性のある接着剤の方が耐久性がある」というのがチームが出した結論でした。そして、試行錯誤を重ねてようやく完成したのが「弾性接着剤」という従来の接着剤の概念を覆す商品です。

1987年、ついに弾性接着剤第一号「PM100」の販売を開始。大型陶板メーカーへの売り込みから始まり、タイル、ガラス、ALCといった資材メーカーや大手ゼネコンにも技術講習会や説明会を実施。丹念な施工指導を続けていった結果、振動や衝撃に強く防水・耐風圧などの機能も備えた弾性接着剤は、次第に建築業界に受け入れられていくこととなったのです。

当時の新聞広告

当時のパンフレット画像

「JIS化」により業界を牽引する存在に

第一号「PM100」のヒット以降、二液形の「PM200」「EP001」、PEG工法を使った「PM300」も加えて弾性接着剤をシリーズ展開。建築・住宅にとどまらず、土木、電機、自動車などその用途は大きく広がっていきました。

そして建築では、1990年代後半から社会問題化した「シックハウス症候群」に対応したクリーンな接着剤として、2003年には内装接着剤関連の6つのJISすべてで基準化されることに。さらに2006年には弾性接着剤の規格として外装タイル張り用接着剤がJIS化されました。商品にあえて独自ネームをつけず、どのメーカーでも使用できる「弾性接着剤」として売り出したのは将来の業界標準化を視野に入れてのこと。この記念すべきJIS化は、国内接着業界ひいては土木建築業界への貢献にもつながったのです。接着剤とともに生きてきたセメダインだからこそ、なし得た偉業であったと言えます。

「タイルエース」