STORY

時代を先取りしすぎた
幻の製品、現場に愛される
アイデア製品。

使用用途が見つからなかった最先端技術

セメダインは、これまで画期的な技術や新製品を生み出してきましたが、中にはあまりにも先進的な発想であったために時代が追い付けず、結局売れずに廃止となった製品や発売を断念した開発品も数多くあります。

その1つ目は、1974年頃に発売された「フィルム状導電性接着剤:U-121CWP」。通常の接着剤は電気絶縁性ですが、導電性接着剤は電気が通る接着剤のこと。現在では当たり前に使われていますが、当時は電気業界も真空管やトランジスターが主力の時代で半導体はまだ先のこと。販売を命じられた営業員をはじめ、電気製品を扱う顧客の技術者さえもどこに使っていいのか分からず混乱する始末。結局、具体的な使用用途が見つからずに廃止となってしまいました。

当時の技術資料

省資源に配慮したSDGs的な製品

2つ目は1984年頃に開発された“もったいない” 精神を生かした廉価壁材用接着剤「レベルボンド(試作品名)」です。当社のシーリング材の生産工程で発生する廃棄物を利用し、充填材にはアルマイト処理メーカーの廃棄スラッジを無料で貰い受けることで原材料費を限りなくゼロにするというもの。

しかし、発売前に大きな問題が発生しました。シーリング材の廃棄物には限りがあることから、拡販しても増産はできません。欠品を避けるために通常の原料を使用すると大幅な材料費高となり、製品のコンセプトが維持できなかったのです。省資源に配慮した製品でしたが、残念なことに発売は断念されました。

そして3つ目は1991年頃に開発された、呼吸する壁紙用接着剤「エアロボンド(試作品名)」。某メーカーより「コンクリートと壁紙につき、透湿性のある接着剤が欲しい」という要望を受けて開発をスタート。材料としては珍しい「珪藻土」を使用した水系接着剤をつくり上げ要望を完璧に満たしましたが、当時の「珪藻土」は貴重な天然材料で供給と品質が安定したものではなかったため、性能が担保できずやむなく断念。

現代では「珪藻土」を利用した壁材、雑貨、塗料、接着剤などが数多く生産されていることから、とても悔やまれる製品であったと言えるでしょう。これらのコンセプトは現在という時点から見れば、3Rのリユース、リサイクル精神を生かし、バイオマス原料を使用したSDGs的な製品として評価されていたかもしれない開発品でした。

現場の声から生まれたアイデア製品

ほかにもセメダインには、「もしかしたら世界初?!」的な小技の効いたアイデア製品がたくさんあります。一つ紹介したいのが「曲がりノズルエルボ」。

「曲がりノズルエルボ」

工事現場の職人さんより「カートリッジガンが使えない狭い現場や片手で操作しなければならない現場では、曲がったノズルがあると便利」という声が上がったことをきっかけに開発を開始しました。曲がりノズルそのものの制作は技術上困難であったため、発想を転換してノズルをつなぐエルボを設計し、「曲がりノズルエルボ」として今もなお職人さんたちに根強く支持されている製品となったのです。