STORY

画期的新容器と
新パッケージの瞬間接着剤
「ゼロタイム」の開発。

ライバル企業の台頭とセメダインの危機

1971年、瞬間接着剤を初めて家庭用に発売したのはライバル企業でした。セメダインはというと、1962年に工業用瞬間接着剤「3000シリーズ」を世に送り出していたものの、家庭用としては各種課題を解消することができず、その販売には二の足を踏んでいたのです。さらに、主力製品であった「セメダインC」の売上に陰りが見え始め、一般家庭用接着剤のトップメーカーとしての地位はこの時期を境に徐々に落ち始めたことから、全社的にも危機感が蔓延していました。

そんな状況を打破するべく対抗馬として1972年に発売されたのが家庭用瞬間接着剤「セメダイン3000ゴールド」です。先行他社に真っ向勝負を挑みましたが、圧倒的な量を誇る広告宣伝の前に、残念ながら両製品の知名度の差は開くばかりでした。その後20年間にわたり、瞬間接着剤市場でセメダインはライバル企業に遅れをとることとなったのです。

家庭用瞬間接着剤「セメダイン3000ゴールド」

従来の瞬間接着剤が持つ欠点を全て解消

「一般家庭用接着剤市場にセメダインの存在感を取り戻したい。」1990年代初頭、その想いを胸に中堅社員を中心としたメンバーが「F1プロジェクト」に集結。彼らはまず現状製品と競合製品の比較から始め、容器の機能や内容物に歴然とした差があることに愕然とします。そして、「初心に戻り、簡単・安心・便利の3要素をクリアしなければライバル企業に勝つことはできない」という事実と向き合ったのです。

それからというものF1プロジェクトメンバーは、デザイン、金型、印刷、充填の各協力会社と密接に連携した共同開発を実施。ついに1992年、金属チューブとプラスチック容器を組み合わせた二重構造で、その間に特殊なゲル状樹脂を注入するというこれまでにない画期的新容器を開発したのです。

その他に、ノズル形状や針なし開封機能を持つキャップ構造の改善、充填技術の向上などにより、従来の瞬間接着剤が持つ欠点のほとんどを解消。さらに、貯蔵安定性の大幅延長、ノズル先のつまり防止、液だれ防止機能、微量吐出の調整機能、立てておける形状などを実現することに成功しました。

特筆すべきは、世界特許にもなった「二重台紙」という新パッケージのアイデアです。台紙の内側が取扱説明書となっており、使い終わればそのまま容器を戻し簡易的に封をすることができるパッケージは、説明書の紛失や容器が収納できないなどの問題を一気に解消しました。それらの開発に要した期間は約1年半。いよいよ1993年に「ゼロタイム」と命名された家庭用瞬間接着剤が市場に登場しました。

容器内部イメージ

「ゼロタイム」

社会の想像を遥かに超えたユーザビリティ

「待ち時間ナシ」を意味するネーミングで消費者のニーズを満たした「ゼロタイム」は、またたく間に市場に受け入れられました。国内5件・海外8カ国という一製品としては飛び抜けた特許出願数もいかに画期的な商品だったかを物語っています。その後、ネーミングの変遷がありましたが、初めてユーザー本位の立場に立った家庭用瞬間接着剤として今後も時代の変化とともに進化を続けていきます。